「安心・安全な野菜を地域の人に食べてもらいたい。」枝豆・レタス農家【吉川 孝】

取材時、12月初旬に吉川さんの畑を訪れた時に、とにかく一面のレタス畑に圧倒されました。良く焼けた肌に笑顔が印象的な吉川さんは、静岡市駿河区の盆地で160a(アール =10m×10m)程の畑でレタスを栽培しています。


ニコニコ優しそうな笑顔で「レタスはね、とにかく繊細なんだよ。温度管理が難しくて手がかかるんです。」と語るその畑は、見事に等間隔に支柱を配置し、ビニールをかけたトンネルの下にびっしり、今がその時とばかりに収穫を待つレタスが植わっていました。
温度管理が難しいレタス栽培において、吉川さんはそのトンネルのビニールを被せる、開ける、で温度を調節しながら手間をたっぷりかけて育てているのだというから大変さが窺がえる。「夜の間はビニールを閉めて寒さから保護し、朝明けることがある。」この160aもの畑を、一人でその作業をしているというのは、まさに「手間をかけて育てている」と言えるのだと思います。
主に秋冬でレタス、春夏で枝豆を育てる吉川さんの人柄について触れていきたいと思います。

元々八百屋さんを営むご両親の元で育った吉川さん。八百屋さんと簡単に言ってしまいましたが、一時期四店舗も経営していたというので、地元では名の知れた八百屋さんだったのがわかります。そんな環境が、農家さんを身近に感じ、農薬をできるだけ使わず農作物を育てる農家さんの存在を意識するきっかけになったようです。吉川さん自身は七年程実家の八百屋さんで働いていました。農業っていいな、という思いはそのころからずっと温めていたそうです。

その後、諸事情により、お父様が家業を廃業することになり、経営者が変わったスーパーで引き続き働いた後、モチベーションが低下してしまい、退職しました。
そして吉川さんにとって、妻子を養うために麻(ヘンプ)の商品開発に携わったり、工場で働いたり、自分は一体何をしたいんだろう、と悩み苦難の時期が続きます。悩みながらも忘れなかったのは農業。農業に携わりたいな、という思いが膨らみます。
何をやりたいか?農業だ。スーパーの青果部門も経験しているから、野菜は他の何よりわかるかな?そう固まってきました。

そんな中見つけたのがレタスや枝豆を主に生産している農業法人の求人。早速応募し、働かせていただくことなりました。
働き出して、どうでした?という質問に、吉川さんは満面の笑顔で答えました。「イケる!!!」と思いました。と。それは感覚的なものだったのだと思いますが、早朝仕事で、体力的にもハードな時も、仕事を終えた時間(夏季はなんと枝豆に関して早朝二時頃に作業をしているのだそう。暑くなる前に収穫を終え、青果市場に仕事な為、終える時間がが10時ころとか!) に感じる充実感、達成感が最高なんだと嬉しそうに教えてくれました。

 

吉川さんは、元々、「いずれは自分でやっていきたい」と思っていたのと、会社が独立を支援してくれたので、3年程務めた後独立、新規就農しました。2016年3月から一人で始めた畑はなんと130a。農地が狭いといわれる静岡市において、何か所かに分かれてはいるものの手広く頑張っていらっしゃいます。

取材時12月はまさにレタスの最盛期。今の吉川さんの1年はレタスを9月~11月初旬まで種を蒔き、10月頃から定植が始まり、だいたい3.4ヵ月(早くて100日くらい)で収穫。3月いっぱいくらいまで採ります。レタスの収穫と重なりながら2月15日くらいから枝豆のトンネルを作り、種まきが始まる。枝豆は80~90日くらいで採れるそうです。

吉川さんの中で占める気持ち的な占有率は枝豆7に、レタス3.なのだそう。やっぱりレタスは手間がかかるからね、と繰り返します。取材しながら、自由に育つ子と、手が掛かる子と、二人の子供を育てるお父さんにしか見えないなあ、なんて思っていました。

それ以外にも、試験的な試みもしながら、落花生、ニンニク、サツマイモ、スナックエンドウ、ソラマメなども育てているそう。レタス、枝豆もそうですが、吉川さんの中で最も重要なキーワードは『安全な野菜』。無農薬栽培にもチャレンジしていて、安全な野菜の供給を目指している。「防護服みたいな宇宙飛行士みたいなの着て、自分自身も(農薬を)撒きたくないじゃないですか!」と明るくおっしゃる吉川さんの周りには、無農薬・有機栽培をしている農家さんの繋がりもあり、情報収集も欠かさない。

独立して、どうですか?と問いかけてみました。やっぱりやりがいがあります。それは手間暇かければかけただけいいものが採れるし、生産量も自分次第で増やしていくことができるから。
今後のビジョンを堂々とした様子で聞かせてくれました。「人はいっぱいいるじゃないですか。安心で安全なものを地域の人に食べてもらいたい。多品種・大量栽培が理想ですね。多品種・少量栽培の農家はよくいますが、自分はみんなにいきわたるようにしたいですね。」

理想を掲げて、富士山が真ん中に拝めるレタス畑の真ん中で、安心・安全な野菜作りへの愛を叫ぶ吉川さんがかっこよかったです。

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2017.12.10 Writer by Chigusa Hanamura