重機を操り、一番おいしい蓮根を目指す。 麻機蓮根農家 【武田誠一】

相棒は重機!?巧みに蓮根を掘り当てます。

一瞬、工事現場か、土木作業場に間違えて来てしまったのかと思いました。というのも、そこには小型のショベルカーで土を掘り起こしている方がいたから。何を隠そう、この方が麻機蓮根農家の武田誠一さん。御年83歳と聞いて、さらに驚きです。
蓮根の栽培がさかんな麻機地域ですが、こんな風に重機で畑を掘るのは武田さんしかいないそうです。蓮根は、文字通り蓮の根。土の中に埋まっていて、どこにあるのか見つけるのは簡単なことではありません。それが機械を使ってともなると、より難易度は上がるはずなのに、「蓮根がだいたいどこにあるかわかるんだよねぇ」と武田さん。ショベルカーで土を掘った場所を手で掘れば、確かにすぐそこに蓮根が顔を出しました。これが15~6年の経験値なのかと、圧倒されます。

 

 

 

肉厚でホクホク♪笑顔がこぼれる、絶品の蓮根。

掘り出した蓮根はしっかりとした太さがあり、試しに持ってみるとズッシリと重い!割って見せてもらうと、通常の蓮根に比べ穴が小さく、肉厚です。「うちの蓮根はおいしいよ!それはもう自信を持って言える」と武田さん。火を入れたときのホクホク感がたまらないそうで、食べた人の中には「初めて蓮根をおいしいと思った」と言う人もいるのだとか。

武田さんがおすすめの食べ方は、ステーキ!3㎜位の厚さに切って焼き、塩・胡椒の味付けのみ、またはごま油をちょっとだけ垂らすと良いのだそう。そのおいしさは〝思わず笑みがこぼれちゃう〟と、顔をクシャクシャにしながら教えてくれました。

おいしさの秘密の1つは、100%とうもろこしを使った肥料。それによって蓮根に糖度が出るようです。鳥が来てこの肥料を食べてしまうそうですが、その後、畑にフンをしてくれることで土地が豊かになって逆にいいのだとか。自然の摂理に任せ、なんとおおらか、蓮根ものびのび育ちそうな気がしてきます。

 

 

楽しくやる。だけど、努力もする。
みんなに「おいしい」って喜んでもらいたいから。

元々土木関係の仕事をしていたという武田さん。なるほど、重機の作業がお手のものなのも納得です。ご実家が農家だったそうで、趣味のゴルフをやらなくなって時間を持て余していたところ、「蓮根づくりをやってみないか」と持ち掛けられ、本人曰く〝やっちゃった〟のが始まりなのだとか。

流れで始めた蓮根農家、しかし、生半可な気持ちではありませんでした。やるからには一番になりたいと、おいしい蓮根を作るために類まれなる努力を重ねてきたのです。蓮根の品種も3回変えてきたと言い、3回目は昨年。めったに地元の外には出ないという岩国の品種を武田さん自身が改良しました。品種を変えるには、畑に植えられていた蓮根を全て取り除き、新しい品種を植え直さなければなりません。しかも、それから本格的に収穫できるようになるのは翌年から。覚悟がないとできません。それでも、「一番おいしい蓮根を作りたい。食べる人に喜んでもらいたい」。その一心で、これまでもこれからも、蓮根を作ります。

泥だらけになりながら、重機を操り、蓮根を掘り出す武田さん。お話を聞いていても、とにかく楽しそう!「好きじゃないとできないですよね」と隣でやはり笑いながら言うのは奥さんの恵子(しげこ)さん。結婚51年のお二人の掛け合いがまた小気味よく、こちらもなんだか楽しく元気になります。

「とにかく食べてみて!蓮根の概念が変わるから!!」と、丸ごと一本お土産にいただいた蓮根は重かったけれど、心は軽やかな帰り道でした。

 

そんな武田さんの蓮根が購入できるのはこちら!
【青物市場Table】  静岡市葵区鷹匠11-19 Tel.054-270-9272
http://www.nect.co.jp/sinmaji/sinmaji.html

ただし、人気が高くすぐに売り切れてしまうそうなので、早めの時間に買いに行くことがおすすめです!